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日本の城 - まめ事典
城|城郭
- 城(しろ)と城郭(じょうかく)はほぼ同義。ただ「郭」には「周囲に囲いがある建造物」という意味合いがあり、城郭は「堀や石垣などの外周部を含めた城」という概念になる。
城の分類
- 山城(やまじろ)
- 自然の山を利用して築かれた城。山の斜面に守られ要所をよく見渡せる。南北朝の時代に発達し全国各地に築かれた。平時は麓に建てられた居館で生活をしていた。
- 平城(ひらじろ)
- 平地に築かれた城。広い土地を利用でき、家臣を多く住まわせることができる。防衛力が弱いので、広い堀を掘って敵を防いだ。
- 平山城(ひらやまじろ)
- 平野部にある丘や低い山を利用して築かれた城。山城の堅固さと平城の土地利用を兼ね備えている。
- 海城(うみじろ)
- 海に面して築かれた城。港を持ち、軍船をつないで制海権を握った。
- 陣城(じんじろ)
- 合戦のために急きょ築かれた城。廃城となった城や古墳なども利用された。
城の構成
- 縄張り(なわばり)
- 城の設計のこと。土地に縄を張って曲輪の配置などを決めたことからそう言われている。
曲輪の配置は次のように分類される。
輪郭式(りんかくしき)=本丸を中心に二の丸、三の丸で囲む縄張り(駿府城、二条城など)。
連郭式(れんかくしき)=本丸と二の丸、三の丸を直線上に置く縄張り(水戸城、盛岡城など)。
梯郭式(ていかくしき)=本丸を隅に置き、本丸を囲うように二の丸を、二の丸を囲うように三の丸をそれぞれ外側に配置する縄張り(弘前城、岡山城など)。
渦郭式〈かかくしき〉=本丸を中心に二の丸、三の丸が渦巻状に連なる縄張り(姫路城、丸亀城など)。
- 曲輪(くるわ)
- 城内に配置された一定の面積をもった平地(廓とも書く)。城では内部に多くの曲輪を持ち、それぞれ役割や機能を備えていてる。 本丸、二の丸、三の丸、西の丸、馬出などがある。
- 本丸(ほんまる)
- 城の中心となる曲輪。天守は通常ここに築かれる。
- 二の丸(にのまる)
- 本丸の外側に隣接して城主の館邸などを設けた曲輪。二の丸の外側には家臣屋敷などが並ぶ三の丸が置かれていた。
- 三の丸(さんのまる)
- 二の丸を守る三の丸、三の丸までが戦闘の曲輪になるため、防御面も重視されていた。また、三の丸には家臣が暮らす屋敷が置かれていた。
- 馬出(うまだし)
- 城門の前(虎口の外)に置かれた小さな曲輪。敵の攻撃から虎口を守り、城兵(騎馬兵)を一時的に待機させる場所。
- 大手(おおて)|搦手(からめて)
- 大手は城の正面、正面の入り口を「大手口」という。搦手は城の裏手、山城などでは城主の避難口として付けられる。
- 虎口(こぐち)|小口(こぐち)
- 城の出入口のこと、入り口は小さくしたので小口、虎口とも呼ばれる。敵の侵入を防ぐため様々な工夫がなされていて、一文字虎口、喰違虎口、 枡形虎口、馬出虎口などがある。
一文字虎口(いちもんじこぐち)=出入り口に城内の様子を見えにくくする土塁を設けた虎口。
喰違虎口(くいちがいこぐち)=城内へ直進できないよう前面に土塁を設け、内側の土塁と外側の土塁をずらした虎口。
枡形虎口(ますがたこぐち)=虎口を石垣や土塁で囲み四角い広場(枡形)を作り、進入してきた敵に横矢を掛るようにした虎口。
- 土塁(どるい)
- 土を城内に盛り上げ敵の侵入にそなえた防御設備。土造りの城では堀を掘った土を盛り上げたもので堀と対になっている。
- 堀(ほり)|濠(ほり)|壕(ほり)
- 城の周囲に設けた敵の侵入を防ぐ防御設備。城を囲むように地面を掘り、敵の進入を防ぐ仕掛け。土を掘っただけの空堀(からぼり)、水を入れた水堀(みずぼり)がある。 近世城郭ではほとんどが水堀になっている。
堀は、城の周囲に人工的に掘った溝。
濠は、自然の河川や沼地を利用した水が入っている溝。
壕は、自然の窪地や谷間を利用した水が入っていない溝。
城の建造物
- 天守(てんしゅ)
- 城の中心になる建物。中世においては敵の攻撃を見張り、戦いの指揮を執るため眺望性が重視されたが、近世になると権威の象徴として威厳性が重視されるようになった。
天守の作り方や形式によって次のように分類される。
望楼型天守(ぼうろうがたてんしゅ)=入母屋造りの建物の上に遠くを見渡すための建物(望楼)を載せた天守、望楼の最上階に廻縁(まわりえん)を付けた天守もある(犬山城、丸岡城、姫路城、高知城など)。
層塔型天守(そうとうがたてんしゅ)=五重塔のように、一階から上階へと規則的に床面積を小さくした天守、関ヶ原の戦い後に生まれた新しい形式の天守(弘前城、松本城。丸亀城など)。
天守の平面構造によっては次のようにも分類される。
独立式天守(どくりつしきてんしゅ)=付属する建物がない独立して建てられた天守(丸岡城、弘前城、丸亀城など)。
複合式天守(ふくごうしきてんしゅ)=付櫓などを接しさせて建てられた天守(犬山城、彦根城、松江城など)。
連結式天守(れんけつしきてんしゅ)= 小天守など他の建物と渡櫓などで連結させて建てられた天守(広島城、熊本城など。)
連立式天守(れんりつしきてんしゅ)=複数の他の建物と渡櫓などで繋げた天守(姫路城、伊予松山城など)。
天守の屋根の両端を飾る破風(はふ)には、入母屋破風(いりもやはふ)、切妻破風(きりづまはふ)、唐破風(からはふ)、千鳥破風(ちどりはふ)などがある。
また、天守の破風には飾りの懸魚(げぎょ)が付られ、屋根の棟には火災にあわないよう鯱(しゃちほこ)が乗せられている。
また天守の状態によっては次のように分類される。
現存天守(げんぞんてんしゅ)=江戸時代までに築城され、修復をされながらも残っている天守
弘前城、松本城、丸岡城、犬山城、彦根城、姫路城、松江城、備中松山城、丸亀城、松山城、宇和島城、高知城の12城
木造復元天守(もくぞうふくげんてんしゅ)=築城当時と同じ材料や工法を使って、外観だけでなく内部の構造も再現した天守
白石城、白河小峰城、新発田城、掛川城、大洲城の 5城
外観復元天守(がいかんふくげんてんしゅ)=外見のみ忠実に、鉄筋コンクリートなど新しい材料、工法で再建した天守
名古屋城、岡山城、広島城、熊本城など
復興天守(ふっこうてんしゅ)= 天守の規模や位置はかつての天守とほぼ同じでも、外観が正確に復元されていない天守
小田原城、岡崎城、大阪城、福山城、島原城など
模擬天守(もぎてんしゅ)=天守がなかった城や天守があったかどうか不明の城に、近現代になって建てられた天守
岐阜城、清州城、富山城、伊賀上野城、今治城など
- 御殿(ごてん)
- 城主の居館。中世では城外に居館を構えていたが、戦国時代になると城外では危険なため城内に建造するようになった。
- 櫓(やぐら)
- 城の高い建物、敵を上から攻撃したり、見張りの役割を持っていた。「矢倉」「矢蔵」とも書かれる。安土桃山時代に天守、二階櫓、多門櫓などへと発展した。
- 御三階櫓(ごさんがいやぐら)
- 何らかの事情で天守を建てられない場合に、天守を代用する櫓として建てられた三重櫓。弘前城や丸亀城の天守に見られる。
- 多門櫓(たもんやぐら)
- 長い建物全体を櫓とした建物。曲輪の全周を多門櫓で囲むと強力な防御体制になる。
- 門(もん)
- 城の防備を固めるために、城の入口や城壁に設けられた建造物。
正門にあたる大手門(おおてもん=敵を追う門でもあることから追手門とも書く)、裏門にあたる搦手門(からめてもん)がある。
門の作りによって冠木門、高麗門、薬医門、櫓門、枡形門、埋門などがある。
冠木門(かぶきもん)=
2本の主柱(鏡柱)の上に水平材(冠木)を渡し、主柱の間に内開きの 2枚の扉を取り付けた簡素な門。
高麗門(こうらいもん)=
2本の主柱(鏡柱)の後方に控柱を設け、控柱にも小さな屋根を乗せた門。
薬医門(やくいもん)=
2本の主柱(鏡柱)と後方に控柱を設け、一つの切妻屋根を乗せた門。
櫓門(やぐらもん)=門の上部に櫓が置かれた門。下が門、上が櫓となっている。
長屋門(ながやもん)=
細長い長屋の中央にに設けられた門、侍屋敷や陣屋に見られる門。
埋門(うずみもん)=石垣や土塀などに穴をあけるようして作った門、裏口や非常口として用いられた。
また、門の扉に金属の板を貼った門は黒鉄門(くろがねもん)、門の扉に細長い鉄板を縦方向に打ち付けた門は筋鉄門(すじがねもん)と呼ばれている。
- 石垣(いしがき)
- 土の流出で斜面が崩れないように斜面の外側に積む石。土台が安定し大きな建物を建てることができるようになる。
野面積(のづらづみ)=自然石をそのまま積んだ石垣。初期の石垣で、外観は不揃いだが水はけが良く機能的には問題ない。野面積でも胴長の石を差し込むように積む 牛蒡積(ごぼうづみ)がある。
打込接))(うちこみはぎ=石材の接合部を加工し、隙間に小石など間詰石(まづめいし)を詰め、石と石の間の隙間を減らした石垣。
切込接(きりこみはぎ)=石材の接合部を徹底的に加工し、石と石の間の隙間をなくした石垣(敵は石垣を登るのが困難になる)。
変則的な積み方としては、六角形に切った石を亀の甲羅のような形状に隙間なく積み上げる 亀甲積(きっこうづみ)、石材の角を立て斜め方向に落とし込むように積み上げる 谷積(たにづみ)などがある。
積み方によっては、高さがそろった石を積む 布積(ぬのづみ)、高さが揃っていない石を積む 乱積(らんづみ)がある。
石垣の隅部の積み方としては、細長い直方体の石の長辺と短辺を互い違いに積み上げることによって隅部の強度を高める 算木積み(さんぎいづみ)がある。
- 塀(へい)|土塀(どべい)
- 防御のため土塁や石垣の上に築かれた塀。城内の仕切りにも用いられた。板塀では火に弱いので漆喰を塗ったものや、土で作られた土塀などがある。狭間を設けて敵兵を狙い撃ちする構造になっている。
- 橋(はし)
- 城内と城外、あるいは曲輪と曲輪を連結させるためのもの。木材れ造られた木橋、土を高く盛って造られた土橋、石橋などがある。
木橋は濠に架ける橋で、敵の攻撃に対し、壊して渡れないようにする仕掛けがある。
防御の仕掛け
- 横矢掛り(よこやがかり)
- 虎口や土塁、石垣に近づく敵を横から攻撃する(横矢を掛ける)仕掛けのこと。様々な仕掛けが工夫されている。
- 枡形(ますがた)
- 土塁や塀などで四角に囲った区域。虎口(城の出入口)を枡形にすれば、侵入してくる敵を閉じ込め横矢を掛けることができる。
枡形虎口はもっとも発達した虎口で、近世城郭ではほとんどの城で採用されている。
- 馬出(うまだし)
- 虎口の外側に設けられた小さな曲輪。敵の攻撃から虎口を守り、騎馬兵を一時的に待機させることができるので攻撃の拠点にもなる。
- 石落し(いしおとし)
- 天守や櫓、塀などの壁に設けた隙間。壁をよじ登ってくる敵に対し、この隙間から石を落として敵の進入を防ぐ仕掛け。
- 狭間(さま)
- 塀や建物の壁などに設けられた矢や鉄砲を発射するための小窓。城内側は広く、城外側が狭くなっている。 弓矢用の狭間(矢狭間)は縦長、鉄砲用の狭間(鉄砲狭間)は丸形、三角形、正方形。
- 忍返(しのびがえし)|武者返し(むしゃがえし)
- 天守や櫓、城門などに矢の穂先状の鉄剣を設けたり(高知城)、石垣の上部を跳ね出したり(人吉城)、天守や櫓の一階部分を石垣より張り出したり(熊本城)して、敵の進入を防ぐ仕掛け。
- 雁行(がんこう)
- 長い城壁に、出っ張った部分とへ込んだ部分をくり返し設けることで、横矢を掛けるようにした仕掛け。
その他用語
- 入封(にゅうほう)
- 土地を与えられた大名がその領地に入ること。
- 転封(てんぽう)
- 幕府の命令で大名の領地を別の場所に移すこと。国替(くにがえ)、移封(いほう)ともいう。
- 分封(ぶんぽう)
- 封地(ほうち=諸侯に割り当てられた土地)を分け与えること。
- 知行(ちぎょう)
- 幕府や藩が家臣に俸禄として土地を支給したこと、またはその土地。
- 知行地(ちぎょうち)
- 知行のために給付された土地。
- 改易(かいえき)
- 江戸時代の侍に科した罪で、身分を平民に落とし家禄、屋敷を没収するもの。
- 外様大名(とざまだいみょう
- 関ヶ原の戦い以降に徳川家康の臣下に入った大名。もともと徳川家とは対等の地位にあった大名も多く、数十万石を越える大大名も存在していたが、地理的には江戸から遠い地に領地を与えられ、常に幕府の警戒と監視下に置かれた。幕府の重職にも就くことはできなかった。
- 参勤交代(さんきんこうたい)
- 江戸幕府が定めた制度。各藩の藩主を自領から江戸へ、江戸から自領へと一年おきに行き来させること。