広島平和記念碑（原爆ドーム）

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平和記念公園

広島平和記念資料館、原爆死没者慰霊碑、原爆ドームが一直線上に配置されている平和記念公園。原爆死没者慰霊碑のアーチを経て原爆ドームを見通せる景観は「原爆死没者の慰霊と世界平和への願い」が表現されている。手前の建物が広島平和記念資料館。核兵器廃絶を願って修学旅行生はじめ多くの人々が訪れている。

原爆死没者慰霊碑

原爆死没者慰霊碑の設計は丹下健三（当時東京大学助教授）が担当。広島平和記念公園の敷地内の、広島平和記念資料館と原爆ドームを結ぶ直線上に設置されている。「原爆犠牲者の霊を雨露から守りたい」という趣旨から、屋根は埴輪（はにわ）の家型をしている。中央の石室には亡くなった被爆者の名前を記帳した原爆死没者名簿が納められている。

過ちは繰り返さない

原爆死没者慰霊碑の石室には「安らかに眠って下さい過ちは繰返しませぬから」と刻まれている。広島市は碑文の趣旨を「すべての人びとが原爆犠牲者の冥福を祈り戦争という過ちを再び繰り返さないことを誓う言葉である　過去の悲しみに耐え憎しみを乗り越えて全人類の共存と繁栄を願い真の世界平和の実現を祈念するヒロシマの心がここに刻まれている」と記している。

嵐の中の母子像

平和公園に設置されている「嵐の中の母子像」、襲いかかる業苦に耐え、悲しみを乗り越えていく母親の強い愛情を示すブロンズ像に市民の平和への願いが託されている。この像は「わだつみの像」をはじめ多くのモニュメントを残している札幌出身の本郷新さんの作品。

原爆ドーム

原爆によって破壊された広島県産業奨励館の残骸、その形から「原爆ドーム」と呼ばれるようになった。原爆はその南東約150m上空で炸裂、銅板で葺かれていた屋根の部分だけが原爆の熱で溶け落ち、鉄骨むきだしの無残な姿になった。建物は全焼し、館内にいた人は全員死亡した。

吹き飛んだ北側

レンガ造り3階建てのモダンな広島県産業奨励館は、広島の名所になっていたという。しかし、原爆によって破壊されたその東側の残骸は、原爆の爆風によって吹き飛ばされ、むき出しになった鉄骨はゆがんでいる。

ライトアップされた原爆ドーム

ほのかにライトアップされた原爆ドーム、核兵器の廃絶どころか核拡散、核戦争へと危険な方向へ向かっている世界に、その悲惨な姿をもって平和へのメッセージを発信し続けている。

灯ろう流し

原爆が投下された8月6日夕刻から、原爆ドーム前を流れる元安川で、死没者を慰霊し平和への願いが書き込まれた灯ろうが流される。この年は1万個ほどの灯篭が流された。元安川では原爆の熱線で全身やけどを負った人々が水を求めて殺到し、多くの方々が亡くなった。

概　要

広島平和記念碑（ひろしまへいわきねんひ）、

1. 核兵器による惨状をそのままの形で今に伝える世界で唯一の建造物であり、核兵器廃絶と恒久平和の大切さを訴える他に例をみない平和記念碑であること

が評価され、1996年、文化遺産に登録された。

構成資産は広島県広島市にある原爆ドーム。

登録地域の面積は、構成資産 0.4ヘクタール、それを保護する緩衝地帯 42.7ヘクタール。

核兵器による惨状を伝える世界で唯一の建造物

原爆ドームは、昭和20年（1945年）8月6日、広島市に投下された原子爆弾によって破壊された広島県産業奨励館の残骸。核兵器による惨状をそのままの形で今に伝える世界で唯一の建造物で「歴史の生き証人」として平和へのメッセージを発信することになった。
世界遺産として登録されているのは原爆ドームが保存されている敷地の部分（国の史跡）だけではあるが、原爆ドーム周辺の平和記念公園、原爆死没者慰霊碑、広島平和記念資料館などと一体になって原爆の悲惨さを世界に訴えている。

募金で保存された原爆ドーム

原爆ドームは、昭和41年（1966年）、平和団体の要請を受けた広島市議会が原爆ドームの保存を決議、広島市民をはじめとする内外からの募金で保存工事が行われ、平成元年(1989年)にも全国からの募金で第二次保存工事が行われ、当時の姿のまま保存されてきた。

負の世界遺産

「人類の負の行為」を記憶にとどめるため、その役割をはたす遺産の総称。世界遺産条約で定義されているものではでなく、登録されている世界遺産の中から、「人類の負の行為」を記憶にとどめる世界遺産を「負の世界遺産」としてくくっている。
「負の世界遺産」は、黒人奴隷の貿易拠点になったセネガル共和国のゴレ島（1978登録）、第二次世界大戦中にユダヤ人が大量に虐殺されたポーランド共和国のアウシュビッツ収容所（1979年登録）、冷戦時代にアメリカの核実験が繰り返されたマーシャル諸島共和国のビキニ環礁（2010年登録）などがある。
原爆ドームを世界遺産に登録するにあたって、アメリカは「戦争関連施設は遺産リストに含めるべきでない」として不支持を表明、中国は「第二次世界大戦での日本の戦争責任」に触れ賛否を保留した。

原爆ドーム略年表

明治時代
1894年（明治27年）

日清戦争（朝鮮半島の支配をめぐる日本と清国との戦争）勃発、広島城内に大日本帝国陸軍の大本営が移され第五師団司令部が置かれた。

大正時代
1915年（大正4年）

広島県が産業振興のために建築した「広島県物産陳列館」が完成。その後「広島県産業奨励館」と名称を改めた（設計はチェコの建築家ヤン・レツル）。
建物は、煉瓦と鉄筋コンクリートで作られた3階建、正面中央階段室は5階建てドーム、一部に地階を有していた。屋根のドーム部分は銅板葺、そのほかはスレート葺でドーム先端までの高さはおよそ25m。洋風庭園や和風庭園も整備されていた。

昭和時代
1945年（昭和20年）

8月 6日、広島市に原子爆弾が投下された。原爆の爆心地から北西約160メートルの至近距離にあった「広島県産業奨励館」は、熱線と爆風を浴びて大破、全焼したが、爆風が上方（爆発点高度約580メートル）からほとんど垂直に働いたため、ドーム中心部は奇跡的に倒壊を免れた。ドーム部の円蓋鉄骨の形から、原爆ドームと呼ばれるようになった。
8月 9日には長崎市に原子爆弾が投下された。 8月15日、第 2次世界大戦は終結した。

1946年（昭和21年）

広島市は1946年8月に「平和復興祭」を開催。この式典は後に広島市が主催する「平和記念式典」となった。

1949年（昭和24年）

1949年（昭和24年）に公布された「広島平和記念都市建設法」に基づき、「広島平和記念都市建設法」が公布され、国家の記念碑的コンペティション「広島市平和記念公園及び記念館競技設計」で、約140件の応募案のなかから丹下健三以下3名（浅田孝・大谷幸夫・木村徳國）の案が選ばれた。

1955年（昭和30年）

原爆ドームを基軸とする「平和記念公園」が完成。「広島平和記念都市建設法」に基づき、1950年（昭和25年）から爆心地周辺を恒久平和の象徴の地として整備する建設が進められていた。
平和記念公園には、原爆死没者慰霊碑をはじめ、原爆供養塔、原爆の子の像等の犠牲者を悼む多くの慰霊碑や、原子爆弾による被爆の実態を伝える広島平和記念資料館（当時は広島平和会館原爆記念陳列館）が建立された。

1966年（昭和41年）

永久保存を求める市民運動もあって、1966年に広島市議会が原爆ドームの保存を決議。同年から保存のための募金運動が行われ、翌年第１回目の保存工事が行われた。

平成時代
1990年（平成 2年）

1989年には再び募金運動が行われ、同年から翌年にかけて第2回目の保存工事が行われた。

1995年（平成 7年）

原爆ドームが国の史跡に指定された。

1996年（平成 8年）

原爆ドームが世界遺産に登録された。

2006年（平成18年）

広島平和記念資料館（丹下健三設計）が、戦後の建造物としては初めて国の重要文化財に指定された。

2007年（平成19年）

平和記念公園が、戦後に整備された公園としては初めて国の名勝に指定された。