富岡製糸場（とみおかせいしじょう）
明治5年（1872年）に建造された富岡製糸場、和洋技術を混交した工場建築の代表であり、長さ１００ｍを超える木骨レンガ造（もっこつれんがぞう）の建物が当時のまま残されている。富岡製糸場は国の史跡に、操糸場（そうしじょう）と東西の繭倉庫（まゆそうこ）は国宝に指定されている。
富岡製糸場・西繭倉庫
東繭倉庫と同じ長さ104.4mある総２階建の西繭倉庫（にしまゆそうこ）。木造の柱（はしら）と梁（はり）を組み立て、レンガを積んで壁にする機能美にも優れた木骨レンガ造（もっこつれんがぞう）の構造がよくわかる。
富岡製糸場・繰糸場外観
繭（まゆ）から生糸を取り出す作業が行われていた繰糸場、窓は明かりを取り入れるためガラス張り、屋根の上には蒸気抜きの越屋根（こしやね）が取り付けられている。建物の大きさは長さ140.4ｍ、幅12.3ｍ、高さ11.8ｍで世界最大規模。
富岡製糸場・繰糸場入口
全国から集められた伝習工女は13～25歳の若き優秀な子女で、1日の労働時間は日の出から日没まで7時間45分（年平均）、週1日の休日、暑休や年末年始の休暇があった。工女の生活は、工女・横田英が当時の富岡製糸場の様子を書き記した「富岡日記」で知ることができる。
富岡製糸場・繰糸場内部
繰糸場の構造は洋式のトラス工法、柱がなく大きな空間が確保されている。創業時に設置された糸とり釜（繭から糸を取り出すために繭を煮る釜）は300釜で世界最大規模。現在設置されている製糸機械は、昭和41年（1966年）から稼動してきた４代目の自動操糸機で、操業停止時のまま保存されている。
田島弥平旧宅（たじまやへいきゅうたく）
田島弥平による「清涼育（せいりょういく）」を実践する近代養蚕農家建築の原点になった旧宅。写真は文久3年（1863年）に建築された主屋、総２階建ての屋根の上には屋根幅いっぱいの櫓（やぐら）が付いている。桑場（くわば）、種蔵（たねぐら）なども現存している。
高山社跡（たかやましゃあと）
高山潮五郎によって開発され近代養蚕飼育法である「清温育（せいおんいく）」を普及するため、明治17年（1884年）に設立された「高山社」発祥の地。分教場として利用されてきた母屋兼蚕室、江戸時代末期から明治時代前半に建てられた長屋門や桑貯蔵庫などが現存している。
荒船風穴（あらふねふうけつ）
岩の隙間から吹き出す冷風を利用した日本最大規模の蚕種（さんしゅ＝蚕の卵）の貯蔵所跡。1号風穴は明治38年（1905年）に建設され、風穴の上には土蔵式建屋が建てられていた。蚕種を低温で貯蔵し孵化の時期を遅らせ、年１回だった養蚕を夏や秋にも行うことを可能にし、生糸の大量生産に貢献した。
