屋久島

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屋久島の西部には海岸線から山麓にかけて、シイやカシ、ヤブツバキなどで覆われた日本最大規模の照葉樹林が広がっている。かつては東アジアに広がっていたが、このようにまとまった照葉樹林は見られなくなった。 この照葉樹林には果実のなる樹木が多くヤクザルやヤクシカによく出会える。

白谷川が花崗岩の節理（マグマが冷却される際にできる割れ目）にそって怒涛の如く流れ落ちる飛流おとし、 白谷雲水峡の入り口から白たえの滝、憩いの大岩を登り越えると見えてくる。 白谷雲水峡は屋久島自然休養林として整備されていて、もののけ姫の森や宮之浦岳を望める太鼓岩に至る様々なコースがある。

標高600～1000mに広がる白谷雲水峡、原生林の中にはいく筋もの白谷川の清流が流れている。雨が多く湿度も高いから、清らかな流れと緑の苔が心を癒してくれる。白谷雲水峡では弥生杉、二代大杉、三本足杉、三本槍杉などの巨木にも出会うことができる。

西部林道からは、海岸線から右奥にそびえる国割岳（くにわりだけ＝標高1323m）の頂上まで、亜熱帯植物から亜寒帯植物におよぶ植生の垂直分布を見ることができる。海岸からシイやカシなどで覆われた日本最大規模の照葉樹林が続き、中腹からは屋久杉などの針葉樹が混じる混交樹林になり、山頂にかけては屋久島固有のヤクシマシャクナゲやヤクシマダケなどが生育している。

周囲130kmほどの屋久島は、九州最高峰の宮之浦岳（みやのうらだけ＝標高1935m）はじめ標高1000mを超える山が46座も連なる山塊の島。標高700mを超えるとスギやツガ、モミなどの針葉樹が混じる混交樹林になり、さらに標高が高くなると屋久杉の巨木が林立する屋久杉原生林になる。屋久杉原生林は国の特別天然記念物に指定されている。

江戸時代に伐採された屋久杉の用途は、主に屋根をふく材料としての平木（幅10cm、長さ60cm）であったため、加工しにくいものは原生林内に放置されてきた。それらは土埋木といわれ、現在でも原生林のなかに残っていて屋久杉工芸品の材料に使われている。

白谷雲水峡で出会える二代大杉（樹高32.0m、胸高周囲4.4m）、一代目の切り株の上に落ちた種が発芽して成長した屋久杉で、根の部分は一代目の切り株が腐ったため空洞になっている。切り株に新しい世代の木が育つことを「切り株更新」といい、屋久島における森の世代交代の特徴になっている。

標高1230mにある紀元杉（樹高19.5m、胸高周囲8.1m）、推定樹齢は3000年といわれている。花崗岩で覆われた屋久島に育つ杉は、成長が遅く木目が詰まっていて、樹脂（ヤニ）をたくさん含んでいることから腐りにくく、500年といわれる寿命をはるかに越えて生き続けている。林野庁の「森の巨人たち100選」に選定されている。

概　要

屋久島（やくしま）は、

1. 樹齢1000年を超える屋久杉を含む原生的な自然林が美しい自然景観を生み出していること
2. 亜熱帯植物から亜寒帯植物が海岸線から山頂へと連続的に分布する植生の垂直分布が見られること

などが評価され、1993年、自然遺産に登録された。

登録地域は、西部の海岸線から中央の山岳部にかけての地域で、その面積は島面積の21％にあたる 10,747ヘクタール。緩衝地帯は設定されていない。

自然景観が評価されての登録は日本では屋久島だけ

屋久島は「樹齢1000年を超える屋久杉を含む原生的な自然林が美しい自然景観を生み出している」として世界自然遺産に登録された。登録基準viiが評価されての登録は、日本では屋久島だけ。
屋久島は、約1400万年前、新生代の造山活動により海面に花崗岩が隆起し、姿を現した。黒潮が運んでくる暖かい空気が屋久島の山にぶつかり、大量の雨を降らせることによって、屋久杉を含む原生的な自然林が育まれてきた。島面積の90％が森林で覆われている。

亜熱帯植物から亜寒帯植物までの植生の垂直分布が見られる屋久島

屋久島は日本列島の南に位置しているにもかかわらず、標高1000mを超える山が46座もある山岳島、島の中央には九州最高峰の宮之浦岳（標高1936m）がある。
海岸線では亜熱帯植物のガジュマルが見られ、山麓にかけてはシイやカシなどで覆われた照葉樹林が広がり、中腹からは屋久杉などの針葉樹が混じる混交樹林になり、山頂にかけては屋久島固有のヤクシマシャクナゲ、ヤクシマダケなどが生育している。宮之浦岳の山頂では冬になると積雪がある。屋久島では、小さな島の中に、海岸線の亜熱帯植物から山頂の亜寒帯植物までの植生の垂直分布が見られる。

樹齢1000年を超える杉が「屋久杉」

屋久島の標高500mを超える山地に自生しているスギが屋久杉。屋久島では特に、樹齢1000年を超える杉を「屋久杉」、それより若い杉を「小杉」と呼んでいる。「屋久杉」は人手が入る前に誕生し江戸時代以降の伐採を免れた屋久杉、「小杉」は伐採跡に誕生した屋久杉といえる。
スギの平均的な寿命は500年余りといわれているが、栄養が乏しい花崗岩の山地にゆっくり育つ屋久島のスギは、材質が緻密で樹脂分が多く､腐りにくいので長寿命。樹齢2000年を超える巨木も現存し、著名な巨木には「縄文杉」とか「紀元杉」などの愛称が付けられている。

屋久島の略年表

約1400万年前ころ

新生代の造山活動により海底の花崗岩が隆起し、海面に姿を現した。

約150万年前ころ

氷期で海面が下がり一旦は九州と陸続きになった。 その後現在のように九州から分離したことで、九州から渡ってきたニホンザルやニホンシカが、屋久島の環境に適応すべく独自の進化を遂げ「ヤクザル」「ヤクシカ」といった固有亜種が誕生した。

江戸時代

屋久島の杉はもともとはご神木としてあがめられ伐採されることはなかったが、16世紀頃に寺院などの建築のために伐採された。
江戸時代になると、薩摩藩の支配下に置かれ、伐採した杉を屋根を葺く平木（ひらき）に加工して年貢として幕府に納めるようになった。森の50～70％が伐採された。

明治時代

森の大部分が国有林化され本格的な森林開発がはじまり、昭和30年代からの高度経済成長の時代にはさらに大規模な伐採が行われた。

1924年（大正13年）

屋久島のスギ原生林が国の「天然記念物」に指定された。

1954年（昭和29年）

戦後の文化財保護法で屋久島のスギ原生林が国の「特別天然記念物」に指定された。

1964年（昭和39年）

「霧島国立公園」に追加編入される形で口永良部島とともに「霧島屋久国立公園」に指定された。

1975年（昭和50年）

自然環境保全法に基づく「屋久島原生自然環境保全地域」が指定された。

1981年（昭和56年）

国立公園区域と原生自然環境保全地域が「屋久島生物圏保護区（ユネスコエコパーク）」としてユネスコの生物圏保護区に指定された。
※一切の伐採が禁止されたのは1980年代になってから。

1990年（平成2年）

鹿児島県、県の総合基本計画が掲げる戦略プロジェクトの1つに「屋久島環境文化村構想」を盛り込む。。

1991年（平成3年）

鹿児島県、有識者からなる「屋久島環境文化懇談会」を設置、そこで「世界遺産への登録」が提起された 。

1992年（平成4年）

林野庁による「屋久島森林生態系保護地域」が指定された。

1993年（平成5年）

第17回世界遺産委員会で自然遺産への登録が決定。
屋久町と上屋久町の両町議会が「屋久島憲章」を制定。屋久島の自然環境保護を第一とし、自然環境との共生による島の将来への指針を示した。

2005年（平成17年）

屋久島北西部の砂浜が「屋久島永田浜」という名称で「ラムサール条約登録湿地」に登録された。

2012年（平成24年）

「霧島屋久国立公園」から屋久島地域を分離し「屋久島国立公園」に指定された。

2016年（平成28年）

「屋久島生物圏保護区（ユネスコエコパーク）」の登録範囲が屋久島町全域に拡張され「屋久島・口永良部島生物圏保存地域（ユネスコエコパーク）」となった。