ホーム > 日本の世界遺産 > 世界遺産用語解説


アイユーシーエヌ(IUCN)
International Union for Conservation of Nature and Natural Resources の略称、「国際自然保護連合」のこと。
1948年に各国政府、国際団体、民間自然保護団体によって設立された自然環境保全に関する非政府国際機関。各国から推薦された自然遺産の調査や評価を行い、世界遺産委員会に協力している。
1980年には日本国内に、IUCNに加盟する団体の連絡協議にための「IUCN日本協議会」が設立された。
イクロム(ICCROM)
International Centre for the Study of the Preservation and Restoration of Cultural Propertyの略称、「文化財の保存及び修復の研究のための国際センター」のこと。本部をローマに置くことから「ローマセンター」とも呼ばれている。
1959年にユネスコによって設立された国際的政府間機関で、学術的・技術的問題に関する研究や助言を行い、技術者の育成と修復作業の水準向上に援助を行っている。
イコモス(ICOMOS)
International Council on Monuments and Sitesの略称、「国際記念物遺跡会議」のこと。
人類の遺跡や建造物の保存を目的として1965年に設立された国際的な非政府組織(NGO)。各国から推薦された文化遺産の調査や評価を行い、世界遺産委員会に協力している。
日本国内のICOMOS会員が組織する機関として「日本イコモス国内委員会」がある。
インテグリティ(integrity)
完全性(かんぜんせい)のこと、「完全であること」を意味する。世界遺産の顕著な普遍的価値を証明するために必要な要素が全て含まれていること、また長期的に保護するための法律などの体制が整えられていること。
文化遺産では、遺産の劣化がコントロールされていること、生きた遺産の特徴や機能が維持されていることなどが求められる。自然遺産では、適切な広さがあり、開発などの影響を受けず、自然本来の姿が保たれていることなどが求められる。
MAB計画(エムエービーけいかく) 
Man and the Biosphere Programme の略称、1971年ユネスコが立ち上げた「人間と生物圏計画」という研究計画。人間と環境の関係を改善し、自然資源の持続可能な利用と保全を促進するための科学的研究および教育や研修を行う。MAB計画では、生物多様性を保全するするための地域として「生物圏保存地域(Biosphere Reserve)=日本国内ではユネスコエコパーク」を定めている。
生物圏保存地域では、生物多様性を「核心地域(コア・エリア)」「緩衝地域(バッファー・ゾーン)」「移行地域(トランジェント・エリア)」の3段階の地域に分けて重層的に保護している。
翌年の1972年に採択された世界遺産条約では、「核心地域」と「緩衝地域」の概念を援用しているものの、当初は「緩衝地域」の設定は求められていなかった。また、世界遺産条約では「移行地域」の概念が採用されていないため、「緩衝地域」の外側での森林伐採や都市開発などが大きな課題になっている。
オーセンティシティ(authenticity)
真正性(しんせいせい)あるいは真実性(しんじつせい)のこと、「本物であること」を意味する。文化遺産では歴史的芸術的に本物であること(修復などにおいては材料・構造・工法の真実性が求められる)、自然遺産では自然が手つかずの自然であること。
かつては、建造された当時の状態がそのまま維持・保存されていることが重視されていたが、これは西欧の石の文化に基づくもので、日本やアフリカなどの木や土の文化には必ずしも対応していなかった。1994年に開催された「真正性に関する奈良会議」において「遺産の保存は地理や気候、環境などの自然条件と、文化・歴史的背景などとの関係の中ですべきである(奈良文書)」とされた。文化ごと真正性が保証される限りにおいて、遺産の解体修理や再建などが可能になった。
プレリミナリー・アセスメント(Preliminary Assessment)
ユネスコの諮問機関と世界遺産委員会での評価の違いが問題視され導入された事前評価制度(じぜんひょうかせいど)。各国が世界遺産委員会に推薦書を提出する前に諮問機関が関与して助言する。2023年から導入さる制度で、2028年の世界遺産委員会から施行される。申請から世界遺産登録まで少なくとも 4年かかる。

核心地域(かくしんちいき)
文化遺産および自然遺産を構成する資産(Property)のこと。コアゾーンとも言われていたが、2008年開催された第32回世界遺産委員会で、コアゾーンとバッファーゾーンいう呼称があると、一つの遺産の中に二つのゾーンがあると受け取られるおそれがあるため、核心地域という呼称は資産(Property)という呼称に改められた。
緩衝地帯(かんしょうちたい)
登録資産を保護するためにその周囲に設けられる利用制限区域のことで、厳密には遺産の一部ではなく「顕著な普遍的価値」は有しない。バッファゾーン(Buffer Zone)ともいわれている。 世界遺産への推薦に際しては、資産(Property)の周辺に遺産を守るのに充分な緩衝地帯(バッファゾーン)を設けることが求められる。
完全性(かんぜんせい)
integrity(インテグリティ)の和訳、「完全であること」を意味し、文化遺産にも自然遺産にも求められる。資産が無傷でであるかどうかを測るものさしで、資産の顕著な普遍的価値を証明するために必要な要素が全て含まれていること、 資産の重要性を示す特徴を不足なく代表するために適切な大きさが確保されていること、資産を長期的に保護のための法律などの制度が確保されていること、が求められる。
記憶遺産(きおくいさん)
人類が長い間記憶して後世に伝える価値があるとされる楽譜、書物などの記録物が登録されるもので、「世界記憶遺産」とも呼ばれているが、日本語の正式表記は「世界の記憶(せかいのきおく)」→世界の記憶参照。
記憶の場(きおくのば) 
2023年 1月の世界遺産委員会臨時会合で導入された概念、負の歴史についても世界遺産に登録されるようになった。国とその国民(少なくともその一部)あるいはコミュニティが、記憶に留めておきたい出来事が起こった場所であり、近年の紛争(20世紀以降に起こった戦争や紛争、戦闘、虐殺など)に関連する場所であること。また、そこは平和と対話の文化を促進する教育的な場所でなければならない、とされている。
なお、人類の「負」の行為を記憶にとどめる遺産の総称として負の遺産と呼ばれてきた世界遺産は、それが世界遺産条約で定義されていないため、どの遺産を負の遺産とするかは諸説あり、定かではなかった。
2023年に開催された第45回世界遺産委員会では、次の 3件が「記憶の場」と呼ばれる世界遺産として登録された。
  1. ESMA 博物館と記憶の場:拘禁と拷問、虐殺のかつての機密拠点(アルゼンチン)
  2. 第一次世界大戦(西部戦線)の慰霊と記憶の場(ベルギー/フランス)
  3. ルワンダ虐殺の記憶の場:ニャマタ、ムランビ、ギソジ、ビセセロ(ルワンダ)
危機遺産(ききいさん)
武力紛争や自然災害、大規模工事、都市・観光開発、密猟などによって危機に瀕している世界遺産のこと。重大な危機に直面している遺産については「危機にさらされている世界遺産リスト」に登録され、保護、修復の対象になる。
代表的なものに「エルサレムの旧市街とその城壁(ヨルダン・ハシミテ王国)」、「バーミヤン渓谷の遺跡群(アフガニスタン)」などがある。 登録されている危機遺産は、2024年 7月31日現在、56件。
危機遺産リスト(危機にさらされている世界遺産リスト)
重大な危機に直面している世界遺産(危機遺産)を保護、修復の対象にするために登録するリスト。「文化遺産」、「自然遺産」それぞれに登録基準が決まっている。
グローバル・ストラテジー(Global Strategy )
世界遺産リストの不均衡を是正し、世界遺産条約への信頼性を取り戻すための選考方針。世界遺産リストにおける「地域的」、「内容的」、「時代的」な不均衡の是正を目標とし、(1)地理的拡大、(2)産業関係、鉱山関係、鉄道関係の強化、(3)先史時代の遺跡群の強化 、(4)20世紀以降の文化遺産の積極的保護が挙げられている。
コアゾーン(Core Zone)
文化遺産および自然遺産を構成する資産(Property)のこと。核心地域ともいわれていたが、2008年開催された第32回世界遺産委員会で、コアゾーンとバッファーゾーンいう呼称があると、一つの遺産の中に二つのゾーンがあると受け取られるおそれがあるため、コアゾーンは資産(Property)という呼称に改められた。
構成資産
複数の資産を複合体として登録するシリアル・ノミネーション・サイト(連続性のある遺産)における複数の資産のこと。例えば「明治日本の産業革命遺産」の場合、8エリアに点在する23の資産が登録されているので、構成資産は23資産となる。
国際記念物遺跡会議(こくさいきねんぶついせきかいぎ)
International Council of Monuments and Sitesの略称、ICMOS(いこもす)ともいわれている。
1965年発足した遺跡や建造物の保存を目的とする世界規模の非政府組織(NGO)で、各国から推薦された文化遺産の調査や評価を行っている。
国際自然保護連合(こくさいしぜんほごれんごう)
International Union for Conservation of Nature and Natural Resources の略称、IUCN(あいゆーしーえぬ)ともいわれている。
1948年、各国政府、国際団体、民間自然保護団体によって設立された自然環境保全に関する非政府国際機関で、各国から推薦された自然遺産の調査や評価を行っている。

産業遺産(さんぎょういさん)
産業の近代化に貢献した遺産、通常は産業革命以後のものをさす。代表的なものに「エンゲルスベリ製鉄所(スウェーデン)」、「ダージリン・ヒマラヤ鉄道(インド)」などがある。
日本には「石見銀山遺跡とその文化的景観」、「富岡製糸場と絹産業遺産群」、「明治日本の産業革命遺産-製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」がある。
暫定リスト(ざんていりすと)
各国が5~10年以内に世界遺産への登録を目指す物件として世界遺産センターに提出する推薦リスト。世界遺産に登録するためには、改めて推薦書を提出し審査を求める。
日本の暫定リストは次の4件(2024年7月31日現在)。
  1. 武家の古都・鎌倉(神奈川県)
  2. 彦根城(滋賀県)=事前評価制度を活用して2027年の登録目指す
  3. 飛鳥・藤原の宮都と関連資産群(奈良県)
  4. 平泉の文化遺産(岩手県)=「柳之御所遺跡」の拡張登録を目指す

資産(しさん)
Property(プロパティ)の和訳。文化遺産および自然遺産の核心部分、これまでのコアゾーンという呼称が改められたもの。文化遺産の場合は個別の文化財や遺跡、自然遺産の場合は公園保護区や生態系保護区をさす。
2008年開催された第32回世界遺産委員会で、コアゾーンとバッファーゾーンいう呼称があると、一つの遺産の中に二つのゾーンがあると受け取られるおそれがあるため、コアゾーンという呼称は資産(Property)に改められた。
自然遺産(しぜんいさん) 
顕著な普遍的価値を有する自然景観、地形や地質、生態系、絶滅のおそれのある動植物の生息地などを含む地域のこと。「世界自然遺産」と呼ばれている。
代表的なものに「グレート・バリア・リーフ(オーストラリア)」、「グランド・キャニオン国立公園(アメリカ)」「ガラパゴス諸島(エクアドル)」などがある。
登録されている自然遺産は、2024年 7月31日現在、231件。
自然環境保全法(しぜんかんきょうほぜんほう)
自然環境の保全を図るための基本方針や、特に自然環境を保全することが必要な地域(原生自然環境保全地域、自然環境保全地域など)について定めた法律(環境省所管)。
自然公園法(しぜんこうえんほう)
すぐれた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図り、国民の保健、休養、教化に資することを目的として、国立公園や国定公園などの自然公園について定めた法律(環境省所管)。
事前評価制度(じぜんひょうかせいど)
ユネスコの諮問機関と世界遺産委員会での評価の違いが問題視され導入された制度(プレリミナリー・アセスメント=Preliminary Assessment)。各国が世界遺産委員会に推薦書を提出する前に諮問機関が関与して助言する。2023年から導入さる制度で、2028年の世界遺産委員会から施行される。申請から世界遺産登録まで少なくとも 4年かかる。
シリアル・ノミネーション・サイト(Serial Nomination Site)
「連続性のある遺産」のこと。文化や歴史的背景、自然環境などが共通する資産を、全体として顕著な普遍的価値を有する遺産として登録すること。構成資産をつなぐストーリーが重視され、個々の資産に顕著な普遍的価値を有していなくても全体として顕著な普遍的価値を有していれば登録される。
代表的なものとしては「ロワール渓谷(フランス)」、もともとは「シャンボールの城と領地」として登録されていたが、登録範囲が拡大されロワール川流域に広がる渓谷と130以上の城館が複合体として一つの物件で登録された。
真正性(しんせいせい)、真実性(しんじつせい)
Authenticity(オーセンティシティ)の和訳、「本物であること」。文化遺産に求められ、文化遺産が歴史的芸術的に本物であること(修復などにおいては材料、構造、工法などの真実性が求められる)。
かつては、建造された当時の状態がそのまま維持・保存されていることが重視されていたが、これは西欧の石の文化に基づくもので、日本やアフリカなどの木や土の文化には必ずしも対応していなかった。1994年に開催された「真正性に関する奈良会議」において「遺産の保存は地理や気候、環境などの自然条件と、文化・歴史的背景などとの関係の中ですべきである(奈良文書)」とされた。文化ごと真正性が保証される限りにおいて、遺産の解体修理や再建などが可能になった。
生物圏保存地域(せいぶつけんほぞんちいき) 
Biosphere Reserve(バイオスフィア・リザーブ)の和訳。MAB計画で、生物多様性を保全するために定められた地域。自然と人間社会の共生に重点が置かれ、生物多様性は「核心地域(コア・エリア)」「緩衝地域(バッファー・ゾーン)」「移行地域(トランジェント・エリア)」の3段階の地域に分けて重層的に保護されている。2019年6月現在、124か国で701地域が登録されている。
日本国内ではユネスコエコパークと呼ばれ、 2019年6月現在、10地域(志賀高原、白山、大台ケ原・大峰山・大杉谷、屋久島・口永良部島、綾、只見、南アルプス、みなかみ、祖母・傾・大崩、甲武信)が登録されている。
生物多様性条約(せいぶつたようせいじょうやく)
正式名称は「生物の多様性に関する条約」。生物の多様性を包括的に保全し、生物資源の持続可能な利用を行うための国際的な枠組みに関する条約。1992年採択、1993年発効。日本は1993年に締結。締約国は、2015年10月現在、169か国。
世界遺産(せかいいさん)
学術的にも芸術的にも「顕著な普遍的価値」を有する唯一無二の存在として認められた文化財や自然のこと。人類共通の財産として保護し、後世に伝えていくため世界遺産リスト(世界遺産一覧表)に記載されている。世界遺産は、文化遺産自然遺産複合遺産に分類され、それぞれ「世界文化遺産」、「世界自然遺産」、「世界複合遺産」と呼ばれている。
条件を満たさなくなった場合は登録が抹消される。2007年にはアラビアオリックス保護区(オマーン)、2009年にはドレスデン・エルベ渓谷(ドイツ)、2021年には海商都市リバプール(イギリス)が抹消された。
2024年7月31日現在、1,223件(文化遺産952件、自然遺産231件、文化と自然の両方の価値を持つ複合遺産40件)が登録されている。日本からは26件(文化遺産21件、自然遺産5件)が登録されている。
世界遺産委員会
原則として毎年1回開催され、世界遺産の登録の可否、危機遺産リストの登録・削除や遺産のモニタリングや技術支援、世界遺産基金の運用などを審議する。
世界遺産の登録の可否では、1.記載(世界遺産一覧表に記載するもの)。 2.情報照会(追加情報の提出を求めた上で次回以降に再審議するもの)。 3.記載延期(より綿密な調査や推薦書の本質的な改定が必要なもの。推薦書の再提出後,約1年半をかけて再度諮問機関の審査を受ける必要がある)。 4.不記載(記載にふさわしくないもの。世界遺産委員会で不記載決議となった場合,例外的な場合を除き再推薦は不可)が決議される。
世界遺産委員会は、世界遺産条約を締結した国から選出された21か国によって構成、21ヵ国の任期は6年間、3分の1の7か国は2年に1回開催されるユネスコ総会で改選される。
世界遺産基金
ユネスコ世界遺産基金(Word Heritage Fund)の略、世界遺産リストに登録された遺産を保護するためにユネスコの信託基金として設立された基金。財源は、条約締約国に義務付けられた分担金と、個人や団体、法人からの寄付金で、世界遺産委員会が管理している。
世界遺産リスト
世界遺産に登録された物件のリスト。世界遺産への登録は、毎年1回開催される世界遺産委員会で審議される。
世界遺産条約
1972年ユネスコ総会で採択され、1975年に発効した「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」。「文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界の遺産として損傷、破壊等の脅威から保護し、保存することが重要との観点から、国際的な協力及び援助の体制を確立すること」を定めている。
2021年7月31日現在、世界遺産条約締約国は194か国。日本は1992年、125番目の締約国になった(現在のリストではユーゴスラビア解体によって繰り上がり124番目となっている)。
世界遺産条約のシンボルマーク(エンブレム) は、 文化資産と自然資産が相互に依存していることを象徴している。中央の正方形は人類の創造による象形であり、円は自然を表し、二つが密接に結ばれていることを表している。
世界遺産センター
ユネスコ世界遺産センター(World Heritage Center)の略、ユネスコ本部に設置された組織で世界遺産委員会の事務局の役割を担う。世界遺産委員会の運営、締約国への登録準備のアドバイス、各国から提出された暫定リストや推薦書の受理、情報公開や世界遺産のデータベース化などを行なう。
世界記憶遺産(せかいきおくいさん)
人類が長い間記憶して後世に伝える価値があるとされる楽譜、書物などの記録物が登録されるもので、「記憶遺産」とか「世界記憶遺産」とも呼ばれているが、日本語の正式表記は「世界の記憶(せかいのきおく)」→世界の記憶参照。
世界ジオパーク
世界ジオパークネットワーク (GGN)が認定する「ジオパーク(大地の公園)」のこと。ユネスコの支援により2004年、世界ジオパークネットワーク (GGN) が設立され、ジオパークを審査して認定する仕組みが作られた。ジオパークとは、 地球活動の遺産を主な見所とする自然と親しむための公園。世界遺産は保護を目的とするためその地域の開発を禁止しているのに対し、ジオパークはその地域の振興のための開発を認めている。
2023年5月現在、46か国195地域が認定されている。日本からは2023年5月現在、洞爺湖有珠山(北海道)、アポイ岳(北海道)、伊豆半島(静岡県)、糸魚川(新潟県)、山陰海岸(京都府、兵庫県、鳥取県)、隠岐諸島(島根県)、室戸(高知県)、阿蘇(熊本県)、島原半島(長崎県)、白山手取川(石川県)の10地域が認定されている。
世界農業遺産(せかいのうぎょういさん)
国連食糧農業機関(FAO)が認定する「世界重要農業資産システム(GIAHS)」のこと。2002年、地域環境を生かした伝統的農法や、生物多様性が守られた土地利用のシステムを保全し次世代に継承する目的で創設された。通称「世界農業遺産」と呼ばれている。
2023年7月現在、アンデス農業(ペルー)、イフガオの棚田(フィリピン)、マサイ族の放牧(ケニア)、万年の伝統稲作(中国)など24か国で77地域が認定されている。日本からはトキと共生する佐渡の里山(新潟県)、能登の里山里海(石川県)など15地域が認定されている。
世界の記憶(せかいのきおく) 
人類が長い間記憶して後世に伝える価値があるとされる楽譜、書物などの記録物が登録される。「記憶遺産」とか「世界記憶遺産」とも呼ばれているが、文部科学省が2016年、日本語表記を外務省が採用してきた「世界の記憶」にしたことから、政府の統一表記となった。世界の記憶は、国際条約により登録されるユネスコの世界遺産や無形文化遺産とは異なり、国際条約はなくユネスコ世界記憶遺産国際諮問委員会によって審査され、自治体や団体でも登録申請できる。審査は2年に1度行われる。
2018年7月現在、フランスの「人権宣言」、オランダの「アンネの日記」、ドイツの詩人ゲーテ直筆の作品や日記など427件が登録されている。日本からは「山本作兵衛が描いた筑豊炭田の記録画」、「慶長遣欧使節関係資料」、「御堂関白記」、「舞鶴への生還」、「東寺百合文書」など7件が登録されている。

登録手続き(とうろくてつづき)
政府が世界遺産候補を「暫定リスト」として世界遺産センターに提出。暫定リストに記載された物件のうち、物件の保護措置など条件が整ったものについて、推薦書を世界遺産センターに提出する。
ユネスコ世界遺産センターは、文化遺産についてはICOMOS(国際記念物遺跡会議)に、自然遺産についてはIUCN(国際自然保護連合)に現地調査を依頼。毎年開かれる世界遺産委員会で登録の可否が決定される。
登録基準(とうろくきじゅん)
世界遺産に登録されるための基準、10の基準がある。登録基準(i)~(vi)の1つ以上を満たして登録された物件は文化遺産に、(vii)~(x)の1つ以上を満たして登録された物件は自然遺産に、双方の基準それぞれ1つ以上を満たして登録された物件は複合遺産になる。
  1. 人類の創造的才能を表す傑作である。
  2. 建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
  3. 現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも稀有な存在)である。
  4. 歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。
  5. あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である(特に不可逆的な変化によりその存在が危ぶまれているもの)。
  6. 顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。
  7. 最上級の自然現象、又は類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。
  8. 生命進化の記録や、地形形成における重要な進行中の地質学的過程、あるいは重要な地形学的又は自然地理学的特徴といった、地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な見本である。
  9. 陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本である。
  10. 学術上又は保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅の恐れのある種の生息地など、生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然生息地を包含する。

登録基準はさまざまな訳文があり、本サイトでは世界遺産と無形文化財 (文化遺産オンライン-文化庁)より引用した。
登録物件(とうろくぶっけん)
世界遺産リストに登録されている物件、2021年 7月31日現在、1154件(文化遺産897件、自然遺産218件、複合遺産39件)が記載されている。
登録抹消(とうろくまっしょう)
世界遺産委員会によって世界遺産の価値が失われたと判断された場合、登録が抹消される。2021年7月31日現在、登録抹消物件は次の3件。
  1. アラビアオリックスの保護区(オマーン)
    オマーン政府が設定した自然保護区で1994年に登録されたが、その後政府が自然保護区の範囲を天然ガスや石油の資源開発のため大幅に縮減させたことから、2007年に抹消された(危機遺産リストに登録されることなく抹消された)。
  2. ドレスデン・エルベ渓谷(ドイツ)
    2004年に登録されていたが、第二次世界大戦以前から大規模な架橋計画があり、橋の建設が決行されたことから、2009年に抹消された(危機遺産リストには2006年に登録されていた)。
  3. 海商都市リバプール(イギリス)
    2004年に登録されていたが、新しい都市開発によって歴史的価値が失われたことから、2021年に抹消された(危機遺産リストには2012年に登録されていた)。
トランス・バウンダリー・サイト(Trans-boundary Site)
国境を越えて登録されている世界遺産のこと。
代表的なものとしては「ベルギーとフランスの鐘楼群」、もともとは「ベルギーの鐘楼群」として登録されていたが、その後フランス北部の鐘楼群も含め国境を越えて登録された。 2016年7月に登録された「ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-」も7か国にまたがる17資産が登録されているトランス・バウンダリー・サイトであり、大陸間をまたがって登録されているトランス・コンチネンタル・サイトでもある。

奈良文書(ならぶんしょ)
1994年に奈良市で開催された「真正性に関する奈良会議」において採択された文書。文化遺産においては、建造された当時の状態がそのまま維持・保存されていることが重視されて、日本やアフリカなどの木や土の文化には必ずしも対応していなかったが、奈良文書では「遺産の保存は地理や気候、環境などの自然条件と、文化・歴史的背景などとの関係の中ですべきである」とされた。文化ごと真正性が保証される限りは、遺産の解体修理や再建などが可能になった。
日本ユネスコ国内委員会
ユネスコは政府機関であることから、加盟国内に政府の諮問機関としてユネスコ国内委員会が設置される。日本ユネスコ国内委員会は、文部科学省の中に事務局機能を置いている。
日本ユネスコ協会連盟
ユネスコ憲章の理念に則り、民間ユネスコ運動を推進することを目的に、1948年に設立された公益財団法人。世界寺子屋運動や世界遺産活動をはじめ、国際協力、ボランティア活動、青少年を対象とした活動などを行っている。
人間と生物圏計画(にんげんとせいぶつけんけいかく)
Man and the Biosphere Programme の略称、1971年ユネスコが立ち上げた研究計画。人間と環境の関係を改善し、自然資源の持続可能な利用と保全を促進するための科学的研究および教育や研修を行う。MAB計画に基づいて「生物圏保存地域」が設けられている。
生物圏保存地域には、2019年6月現在、122か国で686地域が登録されている。日本国内ではユネスコエコパークと呼び、2019年6月現在、10地域(志賀高原、白山、大台ケ原・大峰山・大杉谷、屋久島・口永良部島、綾、只見、南アルプス、みなかみ、祖母・傾・大崩、甲武信)が登録されている。

ハーグ条約
正式名称は「武力紛争の際の文化財保護に関する条約」、国際紛争や内戦から文化財を守ることを定めた条約。1954年オランダのハーグで採択されたことから「ハーグ条約」ともいわれている。締約国には、武力紛争時に文化財を攻撃対象としないことや国外への流失を防ぐことなどが義務付けられる。
1954年ユネスコ総会で採択、1956年発効した。日本は2007年に締結。2014年10月現在、締約国は126か国(アメリカ、イギリス、北朝鮮などは未締結)。
バッファゾーン(Buffer zone)
遺産を保護するためにその周囲に設けられる利用制限区域のこと。厳密には遺産の一部ではなく「顕著な普遍的価値」は有しない。「緩衝地帯」ともいわれている。 世界遺産への推薦に際しては、資産(Property)の周辺に遺産を守るのに充分な緩衝地帯(バッファゾーン)を設けることが求められる。
負の遺産(ふのいさん)  
人類の「負」の行為を記憶にとどめ、二度と同じ過ちを繰り返さないよう登録されている遺産の総称。世界遺産条約で定義されておらず(ユネスコが認めた表現でなく)、どの遺産を負の遺産とするかははっきりしていない。
負の遺産の登録に際し登録基準(vi)が適用されるのは、そこで起きた悲劇が顕著な普遍的価値を持つ出来事であるからで、記念工作物・建造物群・遺跡や自然といった物理的な物に顕著な普遍的価値が認められる必要はない。そのため登録基準(vi)には、「本基準は他の基準と関連して適用されるべき基準と考えられている」と但し書きされている。
負の遺産としては、広島平和記念碑(日本)、アウシュヴィッツ強制収容所(ポーランド)、ゴレ島(セネガル)、ロベン島(南アフリカ)、ビキニ環礁(マーシャル諸島共和国)、囚人収容所遺跡群(オーストラリア連邦)などが挙げられている。
広島平和記念碑(原爆ドーム)の登録にあたっては、アメリカは「戦争関連施設は遺産リストに含めるべきでない」として反対、中国は「第二次世界大戦での日本の戦争責任」に触れ賛否を保留した。
なお、2023年 1月の世界遺産委員会臨時会合で記憶の場(きおくのば)という概念が公式に導入され、負の歴史についても世界遺産に登録されるようになった。2023年に開催された第45回世界遺産委員会では、次の 3件が「記憶の場」と呼ばれる世界遺産として登録された。
  1. ESMA 博物館と記憶の場:拘禁と拷問、虐殺のかつての機密拠点(アルゼンチン)
  2. 第一次世界大戦(西部戦線)の慰霊と記憶の場(ベルギー/フランス)
  3. ルワンダ虐殺の記憶の場:ニャマタ、ムランビ、ギソジ、ビセセロ(ルワンダ)
複合遺産(ふくごういさん) 
「文化遺産」と「自然遺産」の両方の価値を有する遺産。「世界複合遺産」と呼ばれている。代表的なものに「マチュ・ピチュ(ペルー)」、「ウルル・カタ・ジュ国立公園(オーストラリア)」などがある。 登録されている複合遺産は、2024年 7月31日現在、40件 。
武力紛争の際の文化財保護に関する条約
国際紛争や内戦から文化財を守ることを定めた条約、1954年オランダのハーグで採択されたことから「ハーグ条約」ともいわれている。締約国には、武力紛争時に文化財を攻撃対象としないことや国外への流失を防ぐことなどが義務付けられる。
1954年ユネスコ総会で採択、1956年発効した。日本は2007年に締結。2014年10月現在、締約国は126か国(アメリカ、イギリス、北朝鮮などは未締結)。
文化遺産(ぶんかいさん) 
顕著な普遍的価値を有する記念物、建造物、遺跡、文化的景観などのこと。「世界文化遺産」と呼ばれている。代表的なものに「万里の長城(中国)」「メンフィスのピラミッド群(エジプト)」などがある。
登録されている文化遺産は、2024年 7月31日現在、952件。
文化財保護法(ぶんかざいほごほう)
文化財を保護し、その活用をはかって国民の文化的向上に資するための法律(文部科学省所管)。 1949年(昭和24年)1月26日の法隆寺金堂の火災により法隆寺金堂壁画が焼損したのをきっかけに1950年制定された。制定により、それまでの「国宝保存法」「史跡名勝天然記念物保存法」「重要美術品等ノ保存ニ関スル法律」は吸収され廃止となった。
文化財=人間の文化的、生活的活動によって生み出され、残されているもののうち、特に歴史的、文化的価値の高いもの。日本の文化財保護法では「有形文化財」「無形文化財」「民俗文化財」「記念物(史跡・名勝・天然記念物)」「文化的景観」「伝統的建造物群」の 6種が保護の対象になっている。
文化財保存修復研究国際センター
International Centre for theStudy of the Preservation and Restoration of Cultural Propertyの略称、ICCROM(いくろむ)ともいわれている。1959年に発足した文化財保存に関する政府間機関で、学術的・技術的問題の研究助言を行い、専門家の育成と修復技術の向上を目指している。
文化的景観(ぶんかてきけいかん)
1992年に世界遺産の評価基準に加えられた文化遺産の概念で、現存する自然や人工の要素の集合体ではなく「人間が自然に働きかけて作り出した景観」のこと(評価基準は変更されていない)。人間社会が自然環境による制約のなかで、社会的、経済的、文化的に影響を受けながら進化してきたことを示す遺跡に認められる。具体的には、(1)公園や庭園の様に人間が自然の中に作り出した景観、(2)田園や牧場のように農林水産業などと結びついた景観、(3)人間が自然に文化的な意義を付与した景観。
これにより、従来の欧米的な文化遺産の考え方よりも柔軟に文化遺産を捉えることが可能になり、世界各地の文化や伝統の多様性の保護につながっている。世界で初めて文化的景観の価値が認められたのはニュージーランドの「トンガリロ国立公園」。日本の世界遺産では「紀伊山地の霊場と参詣道」、「石見銀山遺跡とその文化的景観」でその価値が認められた。

プレリミナリー・アセスメント
ユネスコの諮問機関と世界遺産委員会での評価の違いが問題視され導入された制度(プレリミナリー・アセスメント=Preliminary Assessment)=事前評価制度(じぜんひょうかせいど)。各国が世界遺産委員会に推薦書を提出する前に諮問機関が関与して助言する。2023年から導入さる制度で、2028年の世界遺産委員会から施行される。申請から世界遺産登録まで少なくとも 4年かかる。

無形文化遺産条約(むけいぶんかいさんじょうやく)
正式名称は「無形文化遺産の保護に関する条約」、2003年のユネスコ総会で採択され、2006年に発効した。無形文化遺産を保護するために、国際的な協力および援助の体制を確立することを目的とした条約。日本は2004年に締結。2019年12月現在、締約国は178か国、無形文化遺産保有国は127か国。
無形文化遺産(むけいぶんかいさん)
「無形文化遺産保護条約(無形文化遺産の保護に関する条約)」に基づいて保護されている無形文化遺産(Intangible Cultural Heritage)。建造物や自然など形があるもの(不動産)が登録対象である世界遺産に対し、無形文化遺産は形にならない人間が持つ知恵や習慣(人びとの慣習・描写・表現・知識及び技術並びにそれらに関連する器具、物品、加工品及び文化的空間など)が対象になる。「世界無形文化遺産」とも呼ばれるが、世界を冠しない「無形文化遺産」が正式名称。
各締約国から提出される個別提案案件を、締約国から選出された24か国の政府間委員会が補助機関の事前審査と勧告を踏まえ、決定する。危機一覧表(緊急に保護する必要がある無形文化遺産の一覧表)と、代表一覧表(人類の無形文化遺産の代表的な一覧表)に記載される。世界遺産のような厳格な価値の評価基準はない。 無形文化遺産は2019年12月現在、549件が登録されている(代表一覧表には463件、危機一覧表には64件)。日本からは、2024年12月現在、能楽、人形浄瑠璃文楽、歌舞伎、雅楽、小千谷縮・越後上布(新潟県)、石州半紙(島根県)、日立風流物(茨城県)、那智の田楽(和歌山)、山・鉾・屋台行事、伝統的酒造りなど23件が登録されている。

ユネスコ(UNESCO)
United Nations Educational, Scientific and Cultural Organizationを略してUNESCO、「 国際連合教育科学文化機関」のこと。1945年に創設された国際連合の専門機関の一つで、教育、科学、文化を通して国際協力を促進し、世界の平和と人類の福祉に寄与することを目的にかかげている。
重点的に推進する目標として「万人のための基礎教育」「文化の多様性の保護および文明間対話の促進」などを定め、識字率の向上や義務教育の普及のための活動、世界遺産の登録と保護などを実施している。
UNESCOは政府機関であり、加盟国内には政府の諮問機関としてユネスコ国内委員会が設置される。日本ユネスコ国内委員会は、文部科学省の中に事務局機能を置いている。
2024年4月現在、加盟国は194か国、準加盟地域は12地域。日本は1951年、60か国目の加盟国。
ユネスコエコパーク
生物圏保存地域(Biosphere Reserve)の日本国内での呼称。ユネスコ人間と生物圏計画(MAB計画)における一事業として1976年から実施されている。手つかずの自然保護を目的とした「世界自然遺産」とは異なり、自然と人間社会の共生に重点が置かれている。景観や生態系を長期的に保全する「核心地域」、核心地域を保護しつつエコツーリズムなどに利用する「緩衝地域」、人が暮らし自然と調和した地域社会の発展を図る「移行地域」が設定されている。
2023年6月15日現在、134か国で748地域(このうち23地域は国境を超えて登録されているトランスバウンダリーサイトで各国の登録地域と重複している)が登録されている。 そのうち国内では10地域(志賀高原、白山、大台ケ原・大峰山・大杉谷、屋久島・口永良部島、綾、只見、南アルプス、みなかみ、祖母・傾・大崩、甲武信)が登録されている。
ユネスコ記憶遺産(ゆねすこきおくいさん)
ユネスコが推進する「世界遺産」、「無形文化遺産」と並ぶ遺産事業の一つで、「世界記憶遺産」とも呼ばれている。ユネスコ世界記録遺産国際諮問委員会によって、人類が長い間記憶して後世に伝える価値があるとされる楽譜、書物などの記録物を対象に登録されるもの。「世界の記憶」「世界記録遺産」とも呼ばれている。世界記憶遺産は、世界遺産とは異なり、自治体や団体でも登録申請で、審査は2年に1度行われる。
2015年10月現在、フランスの「人権宣言」、オランダの「アンネの日記」、ドイツの詩人ゲーテ直筆の作品や日記など348件が登録されている。日本からは「山本作兵衛が描いた筑豊炭田の記録画」、「慶長遣欧使節関係資料」、「舞鶴への生還」など5件が登録されている。

ユネスコ憲章(ゆねすこけんしょう)
国際連合教育科学文化機関憲章の略。1942年、ロンドンで開催された連合国文部大臣会議で教育・文化に関する国際機関の設立が検討され、1945年11月連合国教育文化会議で44か国代表により採択された。前文以下15条よりなる。
ユネスコ憲章前文には、アトリー英首相(当時)が演説の中で述べた「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」という有名な一節がある。この一節には「戦争を繰り返さないため、世界の各国は互いをよく知る必要がある」との反省が込められている。
ユネスコ憲章(前文)
この憲章の当事国政府は、この国民に代わって次のとおり宣言する。 戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。
相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信をおこした共通の原因であり、この疑惑と不信のために、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった。
ここに終りを告げた恐るべき大戦争は、人間の尊厳・平等・相互の尊重という民主主義の原理を否認し、これらの原理の代りに、無知と偏見を通じて人間と人種の不平等という教義をひろめることによって可能にされた戦争であった。
文化の広い普及と正義・自由・平和のための人類の教育とは、人間の尊厳に欠くことのできないものであり、且つすべての国民が相互の援助及び相互の関心の精神をもって果さなければならない神聖な義務である。
政府の政治的及び経済的取り決めのみに基く平和は、世界の諸人民の、一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。よって平和は、失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かれなければならない。
これらの理由によって、この憲章の当事国は、すべての人に教育の充分で平等な機会が与えられ、客観的真理が拘束を受けずに探究され、且つ、思想と知識が自由に交換されるべきことを信じて、その国民の間における伝達の方法を発展させ及び増加させること並びに相互に理解し及び相互の生活を一層真実に一層完全に知るためにこの伝達の方法を用いることに一致し及び決意している。
その結果、当事国は、世界の諸人民の教育、科学及び文化上の関係を通じて、国際連合の設立の目的であり、且つその憲章が宣言している国際平和と人類の共通の福祉という目的を促進するために、ここに国際連合教育科学文化機関を創設する。
ユネスコ総会
ユネスコ加盟国の代表によって構成されるユネスコの最高決議機関。通常2年に1回開催され、ユネスコの施策と事業方針案、予算案を審議し採択する。

ラムサール条約
正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」、水鳥の生息地として湿地およびそこに生息・生育する動植物の保全のために、湿地の適正な利用を促進する条約。1971年、イラン・ラムサールで開催された「湿地及び水鳥の保全のための国際会議」で採択されたことから「ラムサール条約」と呼ばれている。
条約は、水鳥の生息地としてだけでなく、人々の生活環境を支える重要な生態系として幅広く湿地の保全・再生を呼びかけるとともに、産業や地域の人々の生活とバランスのとれた保全を進めるため湿地の「賢明な利用(湿地の生態系を維持しつつそこから得られる恵みを持続的に活用すること)」を提唱している。 2016年11月現在、締約国は169か国、登録湿地数は2243か所。
日本は1980年に締結、2018年10月現在、52か所が登録されている。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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